配信を始めたとき、最初の壁は「音」だった。
カメラの画質には気を使う。照明も整えた。でも視聴者から「声が聞き取りにくい」というコメントが来た瞬間、ようやく気づいた。音が悪いと、どれだけ映像が良くても見てもらえない。そこから機材を調べ始めて、たどり着いたのがこのAT-UMX3だ。
マイクメーカーとして半世紀以上の実績を持つaudio-technicaが、初めて配信専用ミキサーを作った。その意味が、使ってみるとよくわかる。
スペック
| タイプ | USBオーディオミキサー(オーディオインターフェース兼用) |
|---|---|
| サンプリング | 最大192kHz / 24bit |
| チャンネル | 4ch(MIC×1 / LINE×2 / USB STEREO×1) |
| マイク入力 | XLR/TRSコンボジャック(ファンタム電源+48V対応) |
| ライン入力 | ギター(Hi-Z対応)+ キーボード(L/R) |
| ループバック | あり(本体スイッチでON/OFF) |
| 対応OS | Windows / macOS / iOS / iPadOS / Android(ドライバ不要) |
| 対応機器 | PC・スマホ・タブレット・PS4/PS5 |
| サイズ/重量 | 127×44×131mm / 334g |
| 価格 | 19,800円(税込) |
「マイクメーカーが作った」という意味
ミキサーやオーディオインターフェースは、楽器メーカーや電子機器メーカーが作ることが多い。AT-UMX3はそこが違う。audio-technicaのマイク設計担当者が監修し、自社の定番コンデンサーマイクAT2020をリファレンスに設計・音質評価された製品だ。
この出自の違いは、実際の音に出る。マイクから入力した声の透明感、ノイズの少なさ、ダイレクトモニタリングのクリアさ——「なんか声が抜けるな」という感覚が、使い始めた日からある。競合のYAMAHA AG03mk2と同じ環境で比べたとき、ノイズレベルの差に正直驚いた。
筐体内部に金属板を仕込んでシールドとし、独自のフィルタ回路でノイズを排除する設計。PCや周辺機器が多いデスク環境でのノイズ混入を構造レベルで対策している。「AG03で出ていたノイズがAT-UMX3では出なかった」という報告が複数あるのも納得だ。
ループバック機能——配信者が絶対に必要なもの
BGMを流しながら自分の声も配信に乗せる。当たり前のようで、実は対応していない機材も多い。AT-UMX3は本体スイッチひとつでループバックのON/OFFが切り替えられる。配信中に咄嗟に操作できるこの物理スイッチが、地味だけど本当にありがたい。
さらに、ループバックさせるPCの再生音量も独立したノブで調整できる。BGMとマイクのバランスをリアルタイムで整えられる。個人的にはこの機能だけで選ぶ理由になった。
ドライバ不要・繋ぐだけで使える
USB接続してドライバのインストールが不要。Windows・Mac・iOS・Androidすべてに対応している。競合のAG03mk2がWindowsでドライバインストールを必要とするのに対して、AT-UMX3は差すだけで即動く。
これが初心者には圧倒的に優しい。「なんか音が出ない」で詰まる場面がそもそもない。PS4/PS5にも対応しているのでゲーム配信との相性も良い。
127×131mmというほぼ正方形のフットプリント。デスクに置いても邪魔にならない。背面からケーブルが出る設計なので、デスクシェルフの下にケーブルを逃がすとさらにすっきり収まる。機材が増えがちな配信デスクでの存在感の小ささは、想像以上に快適だ。
正直に言う「弱点」
チャンネルを分けてDAWに録音する「マルチトラック録音」には非対応だ。音楽制作をメインにしたい人、複数音源を独立して録りたい人には向かない。あくまで「配信特化」の製品として割り切った設計だ。
エコーやリバーブなどのエフェクト機能もない。歌配信でリアルタイムにエフェクトをかけたいなら、上位モデルや別途エフェクター導入を検討する必要がある。
FOCUSRITE Scarlettなど録音特化のオーディオインターフェースと比べると、マイク入力の細かなニュアンス再現では一歩譲る場面もある。配信・会議・動画収録がメインなら十分すぎる性能。楽曲制作を本格的にやりたいなら別途検討を。
結論:「配信の音問題」を1台で解決する答え
2万円以下でこの音質、この機能、この使いやすさ。正直、買う前は「まあそれなりだろう」と思っていた。使い始めて、その認識が完全に覆された。
声がクリアになった。BGMとのバランスが取れるようになった。ノイズが消えた。視聴者からのコメントが変わった。配信の「音問題」を解決する一台として、AT-UMX3は2万円以下の選択肢の中でほぼ最良解だ。