買ったきっかけは、去年の秋の停電だった。夜、テレビを見ていたら家じゅうの明かりがふっと消えて、冷蔵庫のモーター音まで止まった。真っ暗な廊下で、スマホの残量は27%。子どもが「怖い」と言うより先に、自分の腹の底がひやっとしたのを覚えている。復旧まで3時間半。たった3時間半でも、電気のない家がこんなに無防備だとは思わなかった。
それで防災用にと選んだのが、この Anker Solix C1000 Gen 2。1024Wh・定格1550Wという、いわゆる「1000Whクラス」の大容量モデルだ。正直に言えば、買った時点では「災害が来るまで押し入れで眠らせておく保険」くらいのつもりだった。ところが箱から出して1週間で、こいつは押し入れに戻らなくなった。理由はあとで書く。
主要スペック
| 容量 | 1024Wh(リン酸鉄リチウムイオン電池) |
|---|---|
| 定格出力 | 1550W(瞬間最大2300W相当) |
| 出力ポート | ACコンセント×5/USB-C×3/USB-A ほか(シガーソケット出力対応) |
| 充電時間 | AC急速充電で約54分(アプリの超急速モード時)/ソーラー最短約1.8時間/シガーソケット最短約12時間 |
| 静音性 | 600W以下の入出力時 約20dB(Anker調べ・図書館の静けさに相当) |
| UPS機能 | 停電時 約0.02秒で自動切り替え |
| 寿命 | 4000回以上の充放電サイクル(毎日使っても約10年以上) |
| 重量・サイズ | 約11.3kg/前モデル比 約12%軽量化・約7%省サイズの世界最小クラス |
| 接続・保証 | Wi-Fi/Bluetoothアプリ対応・会員登録で最大5年保証 |
| 型番/ASIN | A1763/B0FK9YH385 |
| 参考価格 | 99,990円(税込・変動あり) |
使って分かった「良かった点」
- 停電の瞬間、体感でわからないレベルで切り替わる。UPSモードにしておけば約0.02秒で給電に切り替わる。試しにデスクトップPCとルーターをつないでブレーカーを落としてみたが、作業中のファイルは何ごともなく開いたまま。あの秋の夜の「ふっと消える」あの感覚が、二度と来ないと思うと肩の力が抜けた。
- 本当に静か。夜の車中泊で音が気にならない。スマホやノートPC程度の低い出力なら、ファンはほとんど回らない。公称20dBは伊達じゃなくて、深夜の車内でも寝息のほうが大きい。テント泊でランタンと扇風機を回した夜も、虫の声のほうが勝っていた。
- 朝の54分で満タンになる充電速度。アプリで超急速モードにすると、空っぽから約54分でフル充電。キャンプ前夜に充電を忘れて青ざめても、支度している間に間に合う。この「間に合う」が、防災でもアウトドアでも地味に効く。
- 11.3kgは、大人なら片手で持ち上げて運べる重さ。前モデルより約1kg以上軽くなった。玄関から車のトランクまで、階段を含めても休憩なしで運べた。大容量ポータブル電源で「持って歩ける」ラインを守っているのは大きい。
- AC5口が、思った以上に生活を助ける。停電の想定でだけ買ったのに、電子レンジを使いながらオーブントースターを回してもブレーカーを気にしなくていい。台所のもう一つのコンセント、として毎日使っている。防災用が日常のインフラに化けた。
正直に言う「注意点」
- 拡張バッテリーに非対応。容量は1024Wh固定。ここは前モデル(Gen1)からの明確な後退点。Gen1は別売りバッテリーで容量を倍以上にできたが、Gen2は増やせない。長期停電で冷蔵庫を丸一日以上まわし続けたい人や、家全体のバックアップを考える人は、拡張対応の上位機を検討したほうがいい。
- 「無音」ではない。高出力時と急速充電中はファンが回る。静かなのはあくまで低出力時の話。ドライヤーや電気ケトルなど1000W級を動かすと、ファンははっきり作動する。急速充電の54分間も同様。寝室で急速充電しながら寝ようとすると、音が気になる人はいるはず。就寝時は静音充電モードに切り替えるのが正解だった。
- LEDライトは非搭載。停電時に本体そのものを照明代わりにはできない。ランタンや懐中電灯は別に用意しておくこと。個人的にはこれで正解だと思っているが(照明はすぐ切れると困る)、期待して買うと肩透かしを食う。
- 価格の変動が激しい。定価付近で慌てて買うと損をする。参考価格は99,990円だが、Amazonや公式ではセールで大きく下がるタイミングが定期的にある。「安物買いの銭失い」の逆で、ここは急がず、セールを待って買うのが賢い。
押し入れに戻らなくなった理由
買って気づいたのは、防災用のポータブル電源を「非常時のためだけ」に眠らせておくのが、いちばんもったいないということだった。押し入れの奥にしまい込むと、いざ災害という日に「どこにやったっけ」と探すはめになる。充電も切れかけている。それでは本末転倒だ。
だから今は、台所の隅に置いて毎日のコンセントとして使っている。休日は庭で電動工具の電源にし、たまの車中泊では枕元の給電基地になる。毎日触っているから残量はいつも把握しているし、メンテナンスも自然と行き届く。「災害に備える」といういちばんの目的が、日常に溶け込ませることでかえって盤石になった。これは買う前には気づかなかった逆転だった。
正直、1024Whという容量は「全部これ一台で」を望む人には物足りない場面もある。でも、キャンプ・車中泊・停電の三つを一台でこなし、夜も気にならない静けさで、大人が片手で運べる。この「ちょうどよさ」の完成度は高い。防災の保険として置いておくもよし、毎日のコンセントとして元を取っていくもよし。どちらの入り方でも後悔しにくい一台だと思っている。