スーパーの袋を両手に提げて、玄関の前で立ち尽くす。鍵はズボンの右ポケット。だが今、その手はレジ袋でふさがっている。一度全部を地面に置いて、鍵を探って、鍵穴に挿す。冬なら手はかじかんでいて、袋の持ち手が指に食い込んだ跡がしばらく消えない。この「玄関前の数十秒」を、たぶん人生で何千回とやってきた。

スマートロックという言葉は前から知っていた。ただ、正直どこか「ガジェット好きのオモチャ」だと思っていた。鍵なんて回せば開く。わざわざ3万円以上出して電子化する意味が、自分には分からなかった。それが変わったのは、実家の母が「鍵が回しにくくなった」と言い出したのがきっかけだ。指の力が落ちると、あの小さなサムターンひとつが、こんなに大きな壁になる。それで選んだのが、この SwitchBot スマートロック Ultra と顔認証パッドPro のセット(型番W5600009)だった。

主要スペック

製品名SwitchBot スマートロック Ultra + 顔認証パッドPro セット
型番W5600009
解錠方法3D顔認証/手のひら静脈認証/指紋/暗証番号/交通系IC(Suica・PASMO・ICOCA)/NFCカード/アプリ/音声など 最大20種類
顔認証赤外線ビームで顔の3D形状を識別。850nm赤外線ライト内蔵で暗所にも対応。メイク・眼鏡の有無に左右されにくい
手のひら静脈認証非接触でかざすだけ。認証距離 約8〜25cm、対応身長 約120〜200cm、6歳以上対応
バッテリーロックUltra 4200mAh/顔認証パッドPro 5000mAh(いずれも充電式・約1年)+予備電池+微電流解錠の三重構成
取り付けサムターン一体型カバー。工事不要・両面テープ式(金属扉はマグネット別売で対応)
動作音20dB以下の静音モード対応
対応OSiOS 15.1以降/Android 7.0以降(遠隔操作にはハブ製品が必要)
セキュリティオートロック、警報・通知、緊急指紋/パスコード、履歴・電池残量確認
参考価格37,980円(税込・変動あり)

使って分かった「良かった点」

✓ 良かった点
  • 「顔を向けるだけ」の速さが、想像の一段上だった。荷物で手がふさがったまま、パッドに顔を向ける。1秒も待たない感覚で「カチャッ」と回る音がして、そのまま肩でドアを押して入る。鍵を探す動作そのものが生活から消えた。大げさだと思っていた顔認証が、いちばん使う入り方になった。
  • 手のひら静脈認証が、地味に効く。指が濡れていても、手袋を外すのが面倒な冬でも、手をかざせば開く。顔認証がマスクで弾かれる場面でも、これがある。Proを選んだ最大の理由がこの静脈で、実際に「顔がダメでも静脈」という二段構えの安心感は大きい。
  • 締め出しの不安に、三重の保険がある。メインは充電式バッテリーで公称約1年。切れても予備電池、それも切れても微電流での緊急解錠が残る。スマートロックを敬遠していた理由がまさに「電池切れで家に入れなくなったら」だったので、この三重装備は素直に信頼できた。
  • サムターン一体型で、後付け感がない。ノブを丸ごと覆うカバー型なので、玄関内側に露出する部品が少なく、見た目がすっきりする。木目調の着せ替えシールも付いていて、賃貸のドアでも浮かない。工事不要で、取り付け自体は位置決めさえ決まれば難しくない。
  • 解錠方法が多いから、家族の誰も置いていかれない。スマホを学校に持ち込めない中学生は指紋、鍵を持たせたくない小学生は顔、力の弱くなった親は静脈。同じ玄関を、それぞれが自分に合った方法で開けられる。「家族全員が使える」という一点が、このセットの本当の価値だと個人的には思っている。

正直に言う「注意点」

⚠ 注意点
  • 夜間の顔認証は、過信しないほうがいい。赤外線ライトを積んでいて暗所対応をうたうが、実際には夜の玄関で顔認証が一発で通らない、という声は少なくない。ただ、そういう場面でこそ静脈認証や指紋が効く。顔だけに頼る運用は避けて、複数の手段を登録しておくのが正解だった。
  • 取り付けの位置合わせは「簡単」とは言い切れない。カバー型ゆえにサムターンが見えなくなり、スムーズに回る中心位置を手探りで探すことになる。付属ガイドはあるが、微妙にズレると動作音が大きくなる。焦らず、時間に余裕のある日に作業したほうがいい。
  • 遠隔操作には別途ハブが要る。本体だけだとBluetooth通信なので、外出先からの施錠確認や解錠はできない。「家に着く前にオートロックを確認したい」といった使い方を想定するなら、SwitchBotのハブ製品を足す前提で予算を組んでおくべきだ。
  • 初期のソフト面には、まだ荒さが残る。ファームウェア次第で電源管理などの挙動に当たり外れがあるという報告もある。アプリの案内でこまめにアップデートを当てる前提の製品だと割り切っておいたほうが、期待とのズレは少ない。

鍵を探す時間が消えて、家族の帰宅がなめらかになった

取り付けて一週間もすると、ポケットの鍵束の存在を忘れるようになった。手ぶらで玄関に立ち、顔を向ける。開く。それだけ。あれだけ当たり前だった「立ち止まって鍵を探す数十秒」が、生活からごっそり抜け落ちた。抜けて初めて、あの時間がどれだけストレスだったかに気づく。

いちばん効いたのは、やはり家族だ。母は静脈認証で難なく玄関を開けられるようになり、「鍵が回せない」というあの申し訳なさそうな一言を聞かなくなった。子どもに鍵を持たせるかどうかで悩む必要もない。玄関という、家族が毎日必ず一度は通る場所の摩擦が、静かに消えていく。これは数字のスペック表を眺めているだけでは分からなかった変化だ。

37,980円は、鍵にかける金額としては確かに高い。だが5年使えば一日あたり20円ほど。個人的には、あの玄関前の数十秒と、家族の「開けにくい」を毎日買い戻していると思えば、決して高すぎる買い物ではなかった。安いスマートロックを買い足しては後悔するくらいなら、最初から上位のこれを選ぶ。そう言い切れる一台だった。

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