完全ワイヤレスイヤホンのレビューというと、普通は音質から語り始める。もちろんAirPods Pro 3の音は文句なく良い。だが今回、実際に使い込んで一番「これは違う」と感じたのは、音を鳴らす性能ではなく、周りの音を取り込む性能のほうだった。

きっかけは、聴力が少し衰えてきた父にこのイヤホンをプレゼントしたことだった。純粋なオーディオ機器として買ったはずが、日常会話を聞き取りやすくする道具として、想像以上に重宝されている。その一方で、ノイズキャンセルが優秀すぎるがゆえの注意点も見えてきた。この記事では、その両面を正直に書いておきたい。

Apple AirPods Pro 3とは

AirPods Pro 3は、Appleのノイズキャンセリング対応・完全ワイヤレスイヤホンの最新モデルだ(型番MFHP4J/A)。iPhoneをはじめとするApple製品との連携のなめらかさは相変わらずで、ケースを開けた瞬間に接続され、デバイス間の切り替えもほぼ意識せずに済む。

本体はカナル型で、アクティブノイズキャンセリングと外部音取り込み(外の音を聞きたいときに取り込むモード)を切り替えて使える。充電端子はUSB-Cに対応している。細かなスペックは世代ごとに更新されるため、購入前には販売ページで最新の仕様を確認しておきたいが、この記事では実際に使って体感した部分を中心に紹介する。

主要スペック

型番MFHP4J/A
参考価格37,300円(税込・変動あり/メーカー参考39,800円)
タイプ完全ワイヤレスイヤホン(カナル型)
ノイズキャンセリングアクティブノイズキャンセリング対応
外部音取り込み対応
充電端子USB-C
カラーホワイト

使ってわかった3つの正直な話

1. 外部音取り込みが、聴力の衰えた家族の会話補助として役立った

一番驚いたのがここだ。聴力が衰えてきた父は、これまでテレビの音量が大きかったり、こちらの声を何度か聞き返したりすることが増えていた。そんな父にAirPods Pro 3を渡し、外部音取り込みモードで使ってもらったところ、「周りの声がクリアに聞こえる」と本人がかなり気に入っている。

断っておくと、これは医療機器としての補聴器ではなく、あくまで外の音を取り込んで聞きやすくするイヤホンの機能だ。聴力の状態によって合う・合わないはあるし、聞こえに本格的な不安がある場合は専門家に相談するのが前提になる。それでも、日常会話の聞き取りを助ける道具として、身近な家族が自然に使えているのは想像以上の収穫だった。取り込んだ音の自然さには、値段なりの作り込みを感じる。

2. ノイズキャンセルが優秀すぎて、外では「気づかない」怖さがある

ノイズキャンセリングの性能は、率直に言って優秀すぎるくらいだ。電車のゴーッという走行音や街の喧騒がすっと消え、静かな空間が手に入る。集中したいときや移動中には最高の体験だ。

ただ、この静けさには裏返しがある。ホームで音楽を聴いていると、電車が入ってきたことにすら気づかないレベルで外の音が遮断される。踏切や車の接近音も同様だ。屋外や交通量のある場所では、ノイズキャンセルをオフにするか外部音取り込みに切り替えるなど、意識して使い分けないと危ない。高性能ゆえに、使う側の注意がより問われる。

3. 音質は「語る必要がない」安定感

肝心の音質は、期待どおり十分なクオリティだ。低音は締まっていて量感もあり、ボーカルや中高域の見通しも良い。ジャンルを選ばず気持ちよく鳴らしてくれるので、音質を理由に不満を感じる場面はまずないだろう。

逆に言えば、音質はもはや「語る必要がない」水準で安定している。そのため購入の決め手は音質というより、外部音取り込みやノイズキャンセル、Apple製品との連携といった「体験全体」にあると感じた。

購入前に知っておきたいこと

⚠ 注意点
  • 屋外ではノイズキャンセルの使い分けが必須。
    遮音性能が高く、電車や車の接近音にも気づきにくい。交通量のある場所では外部音取り込みに切り替えるなど、意識した使い方が必要。
  • 補聴器の代わりにはならない。
    外部音取り込みは会話の聞き取りを助けてくれるが、医療機器ではない。聞こえに本格的な不安がある場合は専門家への相談が前提。
  • 持ち味を活かすにはApple製品との組み合わせが有利。
    接続やデバイス切り替えのなめらかさはApple製品との連携で最も活きる。他社製品でも使えるが、体験の一部は前提が変わる。

こんな人に向いている

  • iPhoneなどApple製品を使っていて、連携のなめらかなイヤホンが欲しい人
  • 通勤・作業でしっかり静けさを確保したい人
  • 外部音取り込みで周囲の音も自然に聞き取りたい人

総評

参考価格37,300円のAirPods Pro 3は、音質だけを見れば「良くて当然」の一台だ。だが実際に使い込んで印象に残ったのは、外部音取り込みの自然さと、優秀すぎるノイズキャンセルという、音を鳴らす以外の部分だった。

聴力が衰えた家族の会話補助として役立つほどの取り込み性能と、外では油断できないほどの遮音性能。この両極を1台で切り替えられるのが、このイヤホンの面白さだと思う。使い分けさえ意識すれば、日常の質を静かに底上げしてくれる一台だ。